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Part 3

“シンプルですが、極めて高い価値を持つ発明です。このデバイスから生まれる結果は素晴らしい物です。“とNEXOのエンジニアリングサポートディレクターのFrançois Deffargesが説明します。
彼が説明しているのは、NEXOのラインアレイシステムが他のシステムと一線を画す独自の機能である指向性位相デバイス(PDD)のことです。
GEO S8タンジェントアレイの開発の一端であったPDDはその後のNEXOの最新型ラインアレイシステムにも不可欠な要素となっています。一見シンプルなデバイスに見えますが、これの効果を説明するにはデジタルオーディオの基礎から始まります。

GEO M10に搭載されているNEXO特許のPhase Directivity Device™(PDD)

“全てのエンジニアの方はご存知の通り、20kHzまでの帯域幅を得たい時は最低でも周波数の倍をサンプルしなくてはいけません。”とFrançoisが説明します。“20kHzを再生、録音する場合は、最低40kHz以上のサンプルが必要です。現在エンジニアの皆さんが使用されているサンプリング周波数44.1kHz、48kHzや96kHzは20kHz以上まで周波数特性を拡張するために用いています。ラインアレイの場合、我々が目指しているのは連続する線状かつ全てのソースが互いに干渉せず一つの音源を形成することです。直接放射の中低域ドライバーを複数組みわせる際にそれぞれの中心距離が再生波長の半分の距離を超えると干渉の影響が生じます。これによって高域ドライバーとのクロスオーバー周波数に大きな制約がでます。(多くの場合は1kHz以下に歪が生じます。)

“初期の段階で、約20㎝の8インチドライバーを採用するGEO S8にPDDを使うことを決めていました。このスピーカー間20㎝の距離は、40㎝の半波長となり、8インチドライバーで最大850Hzまで使用できることを意味しますが、これより上の周波数では干渉が生じます。そのためウェーブガイドを持つ高域ドライバーにスイッチする必要があります。8インチが850Hz程度まで受け持つとしても高域ドライバー側の周波数下限帯域において非常に大きな歪みが生じる問題が起こります。特に小型の高域ドライバーを使用する際に、低い周波数で極めて大きな歪みが起こってしまうのです。”

“PDDは簡単に言うと分離させることをしています。PDDをドライバー筐体の正面に取り付けて放射面を2つに分離します。これにより1つの8インチドライバーの代わりに2つの物理的なソースを8インチでは無く4インチ間隔に置き換えることができます。カップリングされたデバイスを2分割した距離によって高域ドライバーのクロスオーバーポイントを1オクターブ上昇させることが可能になります。”

“これは4インチの間隔、20㎝ではなく10㎝とすることで8インチドライバーに850Hz以上を持たせることができます。これは最大1.7kHzとなりますので高域のクロスオーバーポイントは1.7kHz(これは実際にGEO S8のクロスオーバーポイントになります。)に設定することができます。この周波数は我々人間の聴覚が繊細に聞き分けられる非常に重要な周波数ですが、デバイスによって850-1.7kHzの歪みが約10分の1と大きく減少されるという利点もあります。

François Deffarges, NEXO エンジニアリングサポートディレクター

“これはまた8インチドライバー上部に位置する音響ウェーブガイドのような働きをするため1.5kHz近辺の音響特性の能率を増加させることもできます。これらの結果ユーザーは1-2kHzレンジにおいて歪を減少しながらパワーを増加することができます。”

“PDDは、現在中域ドライバーに平面筐体型のドライバーを採用しているSTMシリーズを除く全てのNEXOキャビネットに搭載されています。STMでは対称構造とするために表面が平面で有る必要があり採用していません。クロスオーバーポイントの下限周波数を低くするためにM46には4台(M28は2台)の大口径高域ドライバーを搭載しています。(STM M46 850Hz、STM M28 900Hz)”

“ラインアレイの現行品であるGEO Mシリーズは6インチ、10インチそして12インチドライバーに合わせてスケールアップしています。GEO M12を例にするとPDD無しの場合はクロスオーバーの下端周波数は550Hzとなります。GEO Mは1台の高域ドライバーを採用しているためこれではクロスオーバー周波数が低すぎます。PDD有りの場合は、これを1.1kHzに設定することができます。リニアスケーリングによってクロスオーバーポイントの周波数を1オクターブ上昇させることができます。中低域ドライバーが小さいほど高いクロスオーバーポイントにすることが可能になります。”

これらは使用されるユーザーの皆さんに何をもたらすのでしょうか?まずは、低歪みになります。GEO M(GEO S12も)システムは中域の周波数帯が非常にクリアに聴こえるかと思いますが、決してキツ過ぎる音質ではありません。歪みを減らすことによって、システムはよりクリアな音質、より自然な音質となり、より多くのヘッドルームを持つことが可能になります。PDDを使用しない他のメーカーでは、低域から高域ドライバーへのクロスオーバーポイントを高く設定できないためパワーが低かったり、高く設定すると中域で干渉が起こることでカバレージアリア内の音質を一定に保つことができません。

“PDDは極めて単純な発想です。96kHz対48kHzのオーバーサンプリングの発明に似ているかもしれません。しかしながら、ユーザーの皆さんにとっては多大な恩恵があると思います。もしNEXOがPDD特許を取得していなかったら、現在市場に出回っている他のラインアレイにもPDDが搭載されていた事でしょう。”