NEXO STMを装備してZeppが台北に進出
NEXO STMを装備してZeppが台北に進出

NEXO STMを装備してZeppが台北に進出

11月 2020 | NEWS | Night Clubs | P+ Series | PS Series | STM | Taiwan

1997年以来、日本におけるコンサート・ライブ体験の場となっているZeppホールネットワークが台湾に上陸しました。そこには既にシンガポールにて性能が実証済のNEXO STMモジュラーラインアレイとYamaha RIVAGEデジタルミキシングシステムの組み合わせを含む機器が移設されました。

Zeppは、全ての会場の音響と照明システムや4Kプロジェクターやステージ機構を標準化して常設することで、ツアーのプロモーターとアーティストに利点を提供することをコンセプトとしています。これらを備えた、お台場、福岡、羽田、名古屋、なんば、大阪ベイサイド、札幌、東京そして横浜の9会場ではステージをゼロから設営することなく、バンドは即座に準備してプレイへと移ることが可能です。

“当時日本のソニー・ミュージックエンタテインメントの100%子会社だったZeppが海外でのコンサートホール事業を開発する計画があるいうことを聞いて、私は非常に興味がありました。”と語るのは株式会社Zeppホールネットワークの海外運営事業部チーフプロデューサーの本多真一郎氏です。同氏は2014年にソニーミュージックグループに加わり、新しい地域の事業拡大をリサーチするために設立されたチームの一員となりました。

2017年、Zeppは日本以外のアジア太平洋地域の事業として、Zeppホールネットワークとシンガポールを拠点とするBig Box Investment社と合弁会社を設立し、ジュロン・イースト地区にある複合商業施設Big Boxの3階を新装しZepp@BIGBOXをオープンしました。
Zepp@BIGBOXに採用する機器は、日本の全てのZepp会場の音響に携わった日本の音響コンサルタントと対話の後に決定されました。最終的に日本の事例とは異なるYamahaとNEXOシステムをシンガポールに導入することになりました。

“我々には優れたサポートネットワークが必要でした。”と本多氏が説明します。“Yamahaはアジアに子会社を持っていて優れたシステムサポートを提供していますし、日本においてサウンドエンジニアはYamahaのコンソールに精通しています。我々としては皆さんに門戸を開きながら同時に優れたサウンドクオリティを提供したいと考えていました。それらが初めての海外事業でYamahaコンソールとNEXOスピーカーを選んだ理由です。”

まず最初に地元のシステムインテグレーターを探すことが最優先であったため、本多氏はヤマハミュージックエレクトロニクス台湾に地元の推奨を尋ね、検討の結果NineTai Audio Group社にシステム設計のアシストとオーディオ機器の設置を依頼することにしました。最終的にNEXO STMラインアレイシステムとYamaha RIVAGE PM10デジタルミキシングシステムを選定し、Danteネットワークを利用してオペレートすることにしました。加えてNine Tai Audio社は機器の管理契約だけではなく、アーティストに専属のサウンドエンジニアが帯同しない際にサウンドエンジニアを提供することも行うことになりました。

コンサートのオーディオについて経験豊富でZeppのオーディオシステムを熟知するNineTai Audio社は、会場のオーディオシステムの管理を自信を持って行うことができました。“STMはこの会場に理想的だと思います。”と語るのはNineTai Audio社のシステム部門のマネージャーTsai Tsung Che氏です。“モジュール式であることに加えて、STMは非常に指向性の高いシステムなので正確にオーディエンスを狙うことができます。その上、通常構成の7段のフライングを再構成する必要がある時は、STMモジュール間の接続は切り離さずにそのまま台車に降ろせば良いので、また再度吊り上げることも非常に簡単に行えます。11か所を超えるZeppのクライアントに収容人数、アクセス、操作性において一貫性を提供する必要があります。テクノロジーの急速な変化に伴って、重要なことは元々の設計は維持しつつ、最新のユーザーフレンドリーなテクノロジーを取り入れていくバランスを取ることが重要だと思います。”

システムデザインの目標は、ロックミュージックのエネルギーにも対応する高い能率を持つことでした、そのため片側STM M46メインモジュールとSTM B112ベースユニットを7台づつ2列に並べて吊り下げ、2台のSTM M28オムニモジュールを最下部に追加することでダウンフィルとしました。更に18台のSTM S118サブウーファーがステージ前部に沿って並べられ、低周波数帯域のカバレージが均一となるようにアレイされています。ステージモニターにはP12とPS15が使用されています。全てのシステムは21台のNEXO NXAMP4x4、4チャンネルのパワードTDコントローラーで駆動され、これにNXDT104MK2 Danteオーディオネットワークカードを装着することで合計84のアンプチャンネルを供給できるようになっています。サイドフィルにはNEXO GEO S1210キャビネットとLS18サブウーファーが使用され、フロントフィルには4台のGEO M1012が使用されています。

NineTai Audio Group社はリモートでNEXOのNicolas Poitrenaudにシステムのセットアップと調整のアドバイスをもらいながら進めました。NEXOのNS-1シミュレーションソフトウェアを用いて音響的な問題を抑制しながら、4,900平米の空間に最適なソリューションを導き出しました。“Zepp New Taipeiは日本の会場の形状によく似ています。”とTsai氏が説明します。“限られた台数のスピーカーで上部のバルコニー席をカバーしながら同時に後壁と天井からの反射を抑制しカバレージを+/- 3 dB以内に抑えると言うことは、やや難題でした。NS-1での計算は非常に役に立ち、リギングの調整にかかる時間が大幅に短縮されました。実際に会場内で測定した結果はシミュレーション結果と同様となりました。

FOHにはYamahaのRIVAGE PM10、モニターにはCL5デジタルミキサーが使用され、メインシステムへの送り用にQL1が使用されています。システム全体のステージのマイク入力はRiO3224-D2 I/Oラックを介し、2台のYamaha RPiO222 I/Oラックと2台の SWP1-16MMF L2ネットワークスイッチを使用してDanteネットワークで接続されています。全ての入力はFOHとモニターに独立して送られるのでハウス、モニターエンジニアが完全に独立したコントロールが行えます。FOHシステムはRIVAGE PM10とNEXO NXAMP間を3台のSWP2-10MMF L2スイッチを使用し、リダンダント機能を用いたDanteネットワークを介して接続されています。

291の固定席を備えた2階のバルコニーを含めホールのスペースは極めて柔軟で、2,245人を収容するライブパフォーマンスから、1,025人を収容する円卓の宴会やガラディナーまで簡単に変更することが可能です。左上部にあるVIP席からは幅14.5mのステージが一望できます。“会場は大型で非常に広いです。”とTsai氏。“コンソール間。Lakeプロセッサー、そして見えない部分もリダンダントを用いた包括的なDanteネットワークによって、ケーブルコストや設置時間の削減ができ安定した伝搬が実現しました。個々の場所に見に行かなくてもネットワークの各パラメーターのモニターと管理をPCで行うことができます。”

“アジアにおいてYamahaとその背後にいる現地のサポート会社の力に関しては誰にも負けないと思います”と本多氏。“製品のエンジニアリングによる性能や信頼性に加えてこれらの強みを提供してくれる他のメーカーは無いと思います。”

本多氏は現在Zepp New Taipeiで日々の運営に携わっており、コンサートプロモーターと密接に協力しながら会場を埋めようとしています。“現在はパンデミックの影響により生活に制限があります。”と語ります。“日本では通常8割の稼働率でほぼ毎日稼働している状況です。これは非常に多くの国内のアーティストがZeppで演奏したいと言ってくれるためです。ここ台湾では、現在地元の音楽産業のイベントを主催したり、企業やビジネス系のイベント、時には礼拝的なイベントもやりますが海外アーティストの公演も行っています。”

 

本記事はProAVL AsiaのRichard Lawn氏のご好意と協力によって作成されました。この記事に関するインタビュー動画が以下でご視聴頂けます。(英語): https://youtu.be/b4C8esRcZDA